ハラルについて
ハラル食品についての授業で課題として纏めた(マレーシアと日本のハラル認証の違いについて、であった)ので、
忘れないうちにまとめておこうと思う。
1. ハラルの概念
ハラルというのは、クルアーンに示されている「許されたもの」のこと。
逆に、ハラムというのは「禁止されているもの」。
マシュブー(mashbooh)という、ハラルとハラムの間の「疑わしいもの」グレーゾーンも存在しているが、基本的には避けるべき。
ハラル、ハラムの概念は食べ物だけでなく、様々な概念全てに適用される。
もちろん行為にもこのような概念が適用される。
(たとえば、クルアーンで禁止されている行為で儲けたお金は汚れている、そのお金で買った食物も汚れている…等)*1
マレーシアのハラル認証ガイドであるMS1500:2009によれば、
ハラルとされる物は簡単に言うと以下の状態。
- ハラムなもの(犬や豚、アルコール*2、尿や血など、正しい手続きを踏んで屠殺されなかった動物)を含んでいない
- 毒性が無い
- ハラムなものを調理したことのある器具を使用して作られていない
- 清潔且つ清掃しやすく作られた施設で製造されていること
- 毒性のないすべての水生生物はハラル
- 毒性のないすべての植物はハラル
- 毒性のないきのこやバクテリアはハラル
- 製品はハラムなものによる汚染がないように、適切に包装されなければならない
2. マレーシアのハラル認証
JAKIMと呼ばれる。政府によって運用されており、世界的にも信頼度が高いとのこと。
マレーシアではおよそ食べ物には何にでもこのJAKIM認証マークがついている。
余談だが、インドネシアでもMUIという認証機関がある。
バリ島で色々な商品を見る限り、インドネシアも認証マーク大国と思われる。
3. 日本のハラル認証
当然ながら、政府による認証機関は存在しないため、全てがビジネスとして運用されている。
ハラル・ジャパン協会にて主な認証団体が記載されている。
ハラル(ハラール)認証基礎知識|ハラル・ジャパン協会
課題においても、こちらに記載されている認証団体の方々に問い合わせのメールを送りました。
回答頂いた皆様、本当に有難う御座います。
マレーシア輸出向けとして、JAKIMに認定されているのは日本ムスリム協会と日本ハラール協会。
4. ハラル認証は安心となりうるか?
私は最初、イスラム教徒の安心のためにはハラル認証を取るべきだと思っていた。
なので、ここでもハラルの授業を取ったのだが…。
課題において、ハラル認証の内容を問い合わせしていたのだが、
日本ムスリム協会*3のムスリムの方からご指摘を頂き、参考としてこのページを教えて頂いた。
一般知識集 | ムスリム旅行者向け食のおもてなし情報(さっぽろ地域雇用創造協議会)
以下引用。
ムスリムが本来最も気にすべきハラームとは、不正に富を貪ることであり、食物規程などではないのです。
『イスラームにおける啓典』の項で述べるとおり、「食べて良いものか?食べてはいけないものか?」は個々の知識と信仰において個々が判断します。
イスラームにおいても食に関する世界的な統一基準はなく、また、決めつけになる様なものを作ることは禁止されています。そういうことに対して、他者が「指針」「基準」等を作ることはトラブルの原因になり得ます。個々の食品がハラールか否かは、適切な判断材料を伝えることで、ムスリム各人が自身の信仰に照らして判断することができます。
すべてのイスラーム教徒は啓典であるクルアーンを指針に、個々人の知識と信仰に照らして自分だけの責任と判断で行動する事が義務であり、知識量や敬虔さ、居住国の状況や文化により選択しない場合もあります。
私が購読しているハラル・ジャパン協会のメールマガジンでもたまに流れてくるが、
アラブ諸国ではそもそもハラル認証というものが存在しない。
逆に、下手に認証マークがついていると、厳しくチェックされる場合もあるとのこと。
先の日本ムスリム協会の方も仰られていたのだが、
ハラル認証のマークさえつければ売れる=最も簡単な偽装食品
となってしまう恐れがあるのである。
例えば、こんな感じに。248am.com
ハラルな豚肉がこの世に存在するかと言ったら、当然、答えはノーである。
そもそも、豚の絵がパッケージに書かれている時点でハラム。
というか、ムスリムなめすぎでしょ、これ。コラージュか。
(まあ、ハラルの授業でも原材料名にポークが入っているハラル商品、豚の絵が書かれているハラル商品などスライドで見ましたが。)
ムスリムの中にも、認証を歓迎する人はいる。
でも、認証を歓迎しない人もいる。
イスラムでは、聖典クルアーンには善い生き方のすべてが書かれており、それを個人個人でよく理解し、考え、神のために行動することが求められている。
神が定めたことに、よく従って生きるにはどうすればいいか?この場合はどうすれば?
結局は、個人個人がしっかり、責任をもって判断すべきなのである。
他人…ハラル認証に頼るのでは、いまひとつなのだ。
一般知識集 | ムスリム旅行者向け食のおもてなし情報(さっぽろ地域雇用創造協議会)
再びこちらから引用。
ムスリムを迎え入れる事業者や生産者には、ハラールかどうかは表記せず、英語や多言語で原材料を記載し、肉を含む場合はその産地を明記することをお勧めします。原材料と原産地を表示することは、ムスリムのみならず、外国人観光客を広く受け入れることにも役立ちます。
ハラル認証マークを取得すればいい、というのではなく、
原材料名を英語化したり等、ムスリムが判断できる情報を増やすことが大事なのだと思う。
ハラルマークがないからといって、その商品が買えないわけではないのだ。
それと、ハラルを勉強するならば、こういったイスラム教の姿勢も理解していく必要があるのだな、と。
それでも、やはり、マレーシア、インドネシア等の、ハラル認証が普及しているアジア諸国に輸出する際の認証の取得は必要になると思われます。
マレーシアでは、どうやらJAKIMの認定した認証機関によるハラル認証が無いと、輸入出来ないとも聞いたので…。
(MIHASのJAKIMブースでは、そのように言っていました)
国内向け、インバウンドでハラル認証を取得する必要は必ずしもないけれど、
アジアのムスリム向けに輸出するなら、取得する必要がある、といったところでしょうか。
*1:Business Ethics in Islam - Mufti Ismail Menk - YouTube
*2:発酵によって出る微量のアルコールは許可されている
*3:日本ムスリム協会はマレーシアのJAKIMに認定されており、ハラル認証も出しているが、 あくまでマレーシア輸出のためのアウトバウンド認証であり、国内向けではないとのこと。