バンガロールからコーチンに向かう。さよならインド
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バス停に行くためにリクシャーを拾った。
運転席に、どこかで見たような文字の新聞があったので、母語を聞いてみた。
カンナダ語とのこと。よっしゃ~!
私はインドに来たら取り敢えずカンナダ語話者に会いたかった。
昔ネットを適当に検索していた時、そのかっこかわいさに友人にどや顔で見せびらかした言語だったからだ。
それが使われている現地にいるというのは割合に感慨深かった。
バンガロールからコーチン行きのバスに乗る。
道が、この旅ピカイチに悪い。
地震の車みたいな、ああいう感じで揺れる。楽しい。(後で降りたら揺れ感が抜けず、凄まじい不快感を味わったが)
バンガロールは、そういう地区に行かなければITの気配なぞないと聞いたが、本当にないですね。ゴミまみれだし。
途中、マイソールあたりで肌の黄色い牛を何頭か見た。
これ。
ターメリックでも塗られてんのかね…?
J氏が、生きたまま味付けされる、などと冗談を言う。カレー味の肉。
バンガロールからコーチンに行くには、西ガーツ山脈を横切らなきゃいけない。
従って一部分は国立公園内を通る道路を通過する。
まあ、なにも大したものは見られんだろうな…と思いながら、ぼんやり窓の外を見つめていた。
ら、にわかに車内が騒然となった。今にも立ち上がらんばかりのインド人たち。なんだ?
どうも、私たちの逆の窓の方に、何かいるらしい。
程なくしてそれは後方の窓に現れた。
…ゾウだ。
ガチの、野生の、インドゾウだ。
高さ2m強程か?
パオーンと凄まじく見事なゾウボイスをあげながら、速度を落としたバスをどすどすと追ってきている。
どう考えても、威嚇されている。
野性だ…。
あわやというところでバスは速度を上げ、ゾウからバスが遠ざかっていく。
運転手は手慣れた様子なので、よくあることなのか?
ただ、周りのインド人の喜びようを見ると、そこまで頻繁に起こる現象でもないようだ。
よく見ると、小さなゾウも一緒だった。子持ちだったらしい。
僕は興奮気味のJ氏と小さくハイタッチした。
ついでに通路を隔てたインド人とも目があったので、親指を立て合った。
目が合ったら目配せしてきてくれたり、インド人は意外とノリがいい。
それやってる私もノリがいい部類なんだろうけど。
途中で寄ったドライブインで、ロティとタンドリーチキン、ティーを注文。
マレーシアのロティ、南インド人が持ち込んだんだなあ、と感慨深くなるくらい、見たまんまロティチャナイ。
「ナン?」じゃなくて最初に「ロティ?」って聞いてくるのが、凄く懐かしさを感じた。
ロティ、マレーシアで大流行だよ。最早マレーシア代表料理と化してるんですよ。知ってる?
卵やら練乳やらミロやら、入れたい放題なんですよ。びっくりだろ。と思いながら食べた。
作り方は、見たところではマレーシアみたいにびったんびったんやってなかったけど。
ロティチャナイといい、テータリといい、マレーシアに来た南インド人はパフォーマンス好きだったのか、それともマレーシア人がパフォーマンス好きだったのか…。
食べるのが遅い私は案の定運転手に急かされ、店員さんの「これこれ!これに包んで!」という指示に従ってチキンを持ち帰り。
ティーは店員さんが紙コップに移し替えてくれた。いやはやすんません。インド人食べるの早いね。
マレーシアに負けず劣らず、チキンは美味かった。
コーチンの空港に着いて、寝てたら、蚊に手を刺された。
もう少しで出国というのに、猛烈に痒かった。
問題なくゲートを潜り、飛行機に乗り、クアラルンプールに到着。
インド旅、終わり。
そして私はおばのいるバリ島へ、J氏はペナンへ帰ることに。
空港のフードコートで、迷いなくKOREAのブースに突進していったJ氏(韓国人)。
無心で韓国料理を貪る彼の姿は、なんとも言えず哀れであった…。
別れ際、言葉を発する力もなくしたJ氏は、渾身のハグだけして行った。
1ヶ月後、ペナンに戻ってきたら普通に元気にしていて安心した。