水濡れインコ

備忘録

早くも帰国を決める。

1/22、朝。
隣でJ氏が起きたので、私も起きた。
J氏がトイレに行ったようだ。このパターンは覚えがあった。

J氏が盛大に吐いた(二度目)。

時間を確認すると、昨日とほぼ寸分違わぬ時間であった。
J氏はついにゲロ体内時計を完成させてしまったらしい。あな恐ろしやインド。


しばらく様子を伺っていると、なぜか、別の部屋からも吐くような音が聞こえてくる。
痰かも知れんが、それにしてはえづき過ぎである…。
な、何だこの街、インド人すら吐くのか?ゲロ特異点か?

そして。

ついにJ氏の心が折れた。
ゲロ時計は所有者の精神にかなりの負担を強いる模様。
まあ、1時間も吐き続けたらそりゃ誰でも心折れます。

みんな、インドに行くならゲロ止めも持ってきてね…。

色々私にも問題はありましたけど。
J氏はインドのごちゃごちゃぐだぐだっぷりとか、
現地人と意味もなくアイコンタクト交わしてニヤニヤするとか、そういうのを楽しめるタイプではなかった。
吐いたのには、確実にストレスもあるだろう。

インドに来て6日目?にしてギブアップ。
話し合い、というか、もう仕方ないので速攻でマレーシアに帰ることを決めました。
帰りの便はインドの一番南、コーチンで1週間後に取っていたので、その日程を調整し、超過料金を支払って帰ることになった。
エアアジアだったけど、全然LCCじゃない値段した。

この時から、中央インドー南インド縦断バスの旅が幕を開けた。


mahabaleshwar、最後に飲んだティーがめっぽう旨くてほぼイキかける。
Inter Plazaの隣のホテルの食堂のティーは旨い。

Inter Plazaをチェックアウト。
チェックアウト時間を大幅に(8:30を12:00)遅れたのに、追加料金もなく送り出してくれた。
本当に、このホテルには世話になってしまった。
トイレに紙入れちゃってほんとにすまない。J氏には注意したんだけど…。それどころじゃなかったんだ彼…。

ちょっと南にあるゴア行きのバスはこの日は出ないようだったので、
取り敢えずプネーpuneまで同じ州営バスでとんぼ返りすることにした。


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バス停。
時間を聞くと13時。一時間ほどあるのでしばらく待っていると、Enquiryのおっちゃんが来た。

「君たちプネー行くんでしょ?あのバスだよ、乗りなさい」

なんて優しいんだ…。


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景色は、信じられないほど綺麗だった。
今でも、この時に見た雄大で鮮やかで、なんの躊躇いもなく「大地」と呼べそうな景色が忘れられない。
東京の狭い電車に乗っている時なんかに、ふと思い出したりする。
日本のどこかにも、誰かにとって、これに等しいほど強烈な景色があるんだろう。


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プネーに着いて、即、バンガロール行きのバスを探す。
J氏はもちろんホームで座ってお留守番だ。
しかし、荷物番がいるというのは楽だ。バックパックはあれで結構重いし暑い。

ワイ「あのう、バンガロール行きのバス…」
Enquiry「アブラカタブラ?(謎言語)」
ワイ「あっ、あのう、バンガロール…バンガロールバス…」
謎の第三者「(滅茶苦茶綺麗な英語で)どこ行きたいの?バンガロール?ならあっちの別のEnquiryだよ」

また別所でも。

ワイ「バンガロールのバス…」
Enquiry「ホンニャクコンニャク」
謎の第三者「バンガロール行くのかい?あの辺にバスが来るよ、ちょっと僕が調べてくるからこの辺で待ってて」

謎の第三者「あのバスだよ、ほら、これ。そこにいる運転手に値段と空いてる席を聞けば、教えてくれるから」

ちょっと薄汚いアジア人相手に、ここまでしてくれるのが、不思議で、有難かった。

でも、私も、日本で同じように困っている外国人がいたら、案内するかもしれない。
一度目白に行きたくて、でも迷っているコロンビア人(mejiroをメヒロと発音していたので、南米系だとわかったのだ)を案内したことがある。
物凄く喜ばれて、一緒に写真を撮られたけれど、彼らもこういうこそばゆい気持ちを味わったんだろうか。

インドは修羅の国みたいに言われているけど、結構こういうことがある。
困っていたり、不慣れな人がいると助けようとする人は、どこの国にもどこの地域にも等しくいるんだと思う。
助けられた分、彼らにどこかで返せるだろうか。


その後、バスの値段が、所持金から考えて少し危険な高さだったので、ATMを探しに一人でリクシャー(目的が目的だけに、結構怖かった)に乗った。
大金を下ろして少々怖かったため、「釣りぁいらねぇ!!」と、多めのお金を渡しておさらばした。

バスチケットもしっかり取った。
夜行バスなので、宿代は浮く。


そんなこんなで、私はバスに乗った時、とても疲れていた。
そう、とても疲れていた。

眠いと思ったが、なにか込み上げてくるものがある。

安堵とか、そういう、いいものじゃなくて、なんかこう、もっと、生々しい、胃のあたりから来るなにかである。
時間が経つに連れて、それはより確実に、私を追い詰めてきた。

あ、まずい。
胃から、なにか、ナマステしそうだ。

私は頑張った。
隣には既にゲロイダーの連れがいる。ここで私が吐いてどうする。
しかし、そいつはすぐそこまで来ている。
特に宗教がないので、祈る相手がいない。
濃いグレーのバス座席だった。必死に見詰めていたので覚えている。

結局吐いた。

J氏から貰ったオレンジにあたったのだろうか?
ビニール袋の中の吐瀉物から漂うそのオレンジ臭が、なんだか更にゲロを誘発しそうだった。
正直勘弁して欲しかったが、より頻繁に吐く野郎が隣にいるため、ビニールの口を閉じるわけにもいかなかった。

J氏「吐くとちょっとスッキリするよね~」
ワイ「あー・・・せやな」

J氏は基本的にポジティブなので、空気が暗くなることはあまりなかった。
そこだけは、この旅の道連れが彼でよかったと思う。